ブダペストの食堂で~フェレンツィの家を訪れる事になった話~

海外

SZIMPATIKUS(シンパティクシュ)はハンガリー語で
初めて会った人の事を直感的に良い人と感じた時、その人の事を表す言葉だそうだ。

レストランでそのウェイターに会った時、その人はシンパティクシュではなかった。

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夜景に心を奪われたブダペスト

僕はハンガリーの街を一日中周った。夜には夜景が見られるゲッレールトの丘に日の入り前に登り
ブダペストの街が夕闇に包まれ、シルエットの中に現れてくる夜景を数時間眺めていた。

僕の宿は国会の近くであったが、21時頃には人影も少なくなっていた。

空腹を忘れ数時間も夜景を見ていたが、昼から何も食べてなかったため、宿の近くに着くと
何か食べたくなった。1人だし、この時間なのでスーパーなどでちょっとしたものを買って
宿で食べようと思ったが、スーパーが近くにある様子はなかった。

ブダペストは日中は治安に関して全く問題がなさそうであり(後にスキミング被害にあった事を知るのだが)
夜間も人影が少ない場所でも観光地のためかあまり危険な感じはしなかった。
しかし、初めての土地なので夜にあまり歩き回るのも気が引け、宿の近くをうろうろしながら
迷っていたのだった。

閉店間際のレストラン

そのレストランは宿から5分くらいの角を曲がった所にあった。道に面してテラス席が何個かと店内に席があった。
客はあまりおらず、テラス席でワインを飲んでいるカップルと店内に一人でお酒を飲んでいる中年男性が一人いるだけだった。
もう店じまいなのかとも思ったが、まだ大丈夫の様だったので店内の席に着いた。
飲み物を聞かれジンジャーエールを頼んだ。そして食事のメニューをもらおうとすると
なんと、食事はラストオーダーを過ぎているとのことだった。
そのウェイターは20代の顔立ちがはっきりしている若者でアルバイトなのだろう。
なんでもいいので食事をしたいことを伝えると少々面倒そうに厨房に確認に行ってくれた。
そのウェイターは愛想は良くなく、入店時にも「もうすぐ閉店だよ」という表情をして
正直印象はあまり良くなかった。

戻ってきたウェイターはシチューの様なものなら出来ると述べ、それをオーダーした。
その後、ハンガリーの伝統的なサラダは要るかと聞かれ、せっかくなのでそれもお願いした。

そのウェイターは最初は愛想が悪いと思っていたのだが、待っている間も何度か席に来て英語で話しかけてきた。
どこから来たのか、ハンガリーは初めてかなど他愛もない会話をしていた。

何気ない会話から思わぬ展開へ

何気なく「君英語上手だね!」英語を褒めたのだが、そこから気を良くしたのか愛想が良くなった。
海外を旅すると英語が母国語でないのに流暢に喋る人が多いのに驚く。なので、そのウェイターも英語がペラペラであった。(そもそも自分が人様の英語を評価できる程の能力は到底ないのだが)

 

彼は英語が喋れる理由として、現役の大学生であり英語を勉強していると述べていた。また、専攻は心理学と述べていた。そこで自分も心理学について勉強していた事を告げると嬉しそうに会話に花が咲いた。

 

ブダペストの観光地の話になり、彼は「フェレンツィの家には行ったか?」と聞いてきたのである。フェレンツィは精神分析の祖フロイトの元弟子で、徐々に従来の技法から新たな技法を提唱し、現代の精神分析の萌芽を作ったとも言われる人物である。

彼の住んでいた家があるというのだ。彼も自分もフェレンツィについてそこまで詳しく知っているわけではなかったが、共通の話題だったのでとても楽しかった。彼はその場所への行き方について調べて教えてくれ、翌日行ってみると伝えると嬉しそうにしていた。

そんなこんなで、勇気を出してレストランに入り、最初は閉店間際で悪かったかなーなどと

入ったことを後悔したのであるが、とても有意義であった。最初の印象で全てを決めて、心を閉ざしてしまったら得られない展開だったと感じ、印象なんてあてにならないと学んだ。

プライスレスな経験

帰りがけに、僕は異国の地で1人で退屈に食べるはずだった夕食が、彼のおかげで思いがけず楽しいものになったので、チップを渡したくなったのだ。ハンガリーがチップ文化があるのか知らなかったが、心から感謝を感じ、自発的に渡したくなるのが本来のチップなのかと感じた。

彼はクールに受け取り店を後にしたのだが、果たしてチップを渡した事が良かったのかを考えてしまった。彼はウェイターのサービスの一つとして様々な会話をしてくれたのではなく、「私」として接してくれたように思えた。しかし、僕がチップを渡した瞬間に、その楽しかった時間が、仕事の延長の接客サービスになってしまったように感じたのだった。

彼がどう感じたのかはわからないし、特に深く考える話ではないのかもしれないが

チップの意味について考えさせられた。

閉まっていたフェレンツィの家

翌日フェレンツィの家に向かった。宿からはさほど遠くはなく、バスを乗り継いで少し歩いた。

今はgoogle mapがあるので住所さえ分かっていれば、いや住所がわかってなくても

行き方を調べる事ができる。

坂道にあるその家は一般の家と区別がつかない程静かにそこに建っていた。フェレンツィは精神分析界隈では有名であるが、一般的にはあまり知られていないため観光地化はされていないようだ。実際にその家も、僕が行った日は閉まっていた。どうも、事前に連絡を入れて予約をすれば中に入れるようだ。

フェレンツィの家は大きな感動もなかったが、ここに導いてくれた前日のレストランでの出来事が

とても忘れられない経験となった。

 

 

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