植え付けられたイメージからの解放 中島みゆきの夜会のコンセプト

雑記
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テーマ曲が背負うイメージという呪縛

ドラマ人間失格はいじめや自殺を扱う暗く重いドラマであった。当時はトレンディードラマで過去の洋楽ミュージックをテーマ曲に起用するのが流行っていた時期もあり、僕もこのドラマでテーマ曲やドラマ内に挿入された、サイモン&ガーファンクルを知り、好きになっていった。主題歌の冬の散歩道は、切迫するようなドラムの音と共にイントロが始まり焦燥を抱かせ、「Time Time Time」と歌が始まる。この曲はサビらしいサビはなく、最初から最後までマイナー調の不安と焦りを掻き立てる曲調が続く。
この曲は英語なので、実際にどんな事が歌われていたのかは、当時の自分は分からなかったのだが、ドラマの暗く重い内容とリンクする様な事が歌われている気がしていたと思う。
その他このドラマでは「水曜の朝、午前3時」「明日に架ける橋」など多くの名曲が使われた。
後に発売されたDVDを見た時驚いたのは、このドラマといったらコレとインプリンティングされていた、サイモン&ガーファンクルの曲が差し替えられていたことであった。おそらく、映像商品への楽曲使用の許可が下りなかったのだと思われるが、更に驚いたのは、主題歌の「冬の散歩道」に非常に似させた音楽が、ドラマのオープニングに使われていた事であった。
最初、これは冬の散歩道の歌部分を削除した、カラオケバージョンを使用しているのかと思ったが、どうもそうではないようだ。しかし、非常によく似ている。でも、差異はあり違う音楽である。
これはとても不思議な体験であった。もしかして、当時自分が視聴していた時も、この音楽が主題歌として流れていたのではないかと錯覚するほどであった。


 

積み荷のない船がいざなう旅

この曲は沢木耕太郎の「深夜特急」がテレビドラマとして放映された時の主題歌である。
僕は深夜特急をこのテレビドラマで知り、その後小説を読んだので、深夜特急と言えば井上陽水のこの「積み荷のない船」が頭に浮かぶ。
この曲はエンディングで流れたのだが、最初は何でこんなマイナーな曲をテーマにしたんだろうと感じた記憶がある。マイナー調でゆっくり始まるその曲は、明るさはなく、哀愁漂う旋律である。この曲は歌が始まるまでに長いイントロが続く。そのイントロに合わせて、画面では次の目的地に向けてバスに乗った主人公の様子が映される事が多い。希望や期待はそこになく、ただ虚無をまとった旅人の様に見えた。ただ何度も見ているうちに、深夜特急とリンクして、とてもマッチした感覚になるから不思議だ。

限定された曲のイメージからの解放

この様に、この曲を聴くと映像が浮かぶほどの強い結びつきがある場合、その曲は限定され不自由になってしまうかもしれない。
中島みゆきの夜会は、曲の植え付けられたイメージから解放するというのが当初のコンセプトだった。彼女の過去に発表された楽曲を、彼女が演じる劇に合わせて使うと、妙に具体的に歌われた歌も、全く異なる劇中歌として存在しうることに気づく可能性がある。そんなこんなで言葉の実験劇場と称された夜会は1989年のVol1から現在まで彼女のライフワークとして続いている。Vol7の2ぶんの2からは過去の楽曲を使用せず、ほとんどの曲を書きおろして作られている。
当初の曲のイメージからの解放というコンセプトからは変わっていったようだ。
2019年に上演された、最新の夜会Vol20「リトルトーキョー」は久しぶりに過去の楽曲が使われた夜会でもあった。非常に取っつきやすいものになっており、初心者にもおすすめである。

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